あれは、とある日のオフ会だった。

 参加者の一人のMさんが仕事の都合で遅れてくると言う事なので、喫茶店で駄弁りながら待つ事になった。最初は、最近のネットの話やアニメの話をしていたんだけど、いつの間にか、Kさんが聞いた怪談話の話題になった。

 それは、とあるオフ会の話だった。焼肉食べ放題のコースで、皆、食べて飲んで喋ってと、和気藹々としていたらしい。
 参加者の一人──仮にAさんとしておく──が、ふと、隣で黙々と肉を食べ続けていた人の様子が気になって、声をかけた。
「Bさん、さっきから食べてばっかりだけど、どうしたの?」
「……」声をかけられた事に気づかなかったのか、Bさんは黙々と肉を食べ続けていた。
「Bさん?」
「力が入らないんだ……」
「え? なんだって?」AさんはBさんの返事が良く聞き取れず、聞き返してみた。
「おなかがペコペコで、腹に力が入らないんだ……」
「ペコペコって、結構な量、食べてるじゃない」
「食べても食べても……、おなかが膨れないんだ」
「そんなわけな……。うわぁっ!」そこまで言いかけて、AさんはBさんのおなかから、内臓らしき物が飛び出ているの気づき、驚きの声を上げて気を失った。
「食べても食べても、おなかから零れ出るんだ」気を失う直前、Bさんの悲しげな声をAさんは聞いた。
 その後、Aさんは意識を取り戻すと、Bさんがオフ会に来る途中に事故に遭い、ちょうど、Aさんが気を失った頃に息を引き取ったと言う話を聞いた。事故で、Bさんの腹は避け内臓が飛び出て、胃も大きく裂けていたらしい。
 その話を聞きながら、Aさんの脳裏にはBさんの最後の言葉が、何度も何度も繰り返し聞こえていたらしい。

「なんだか、どこかで聞いたような話だな。あ、Mさん」Kさんの話が終わった時、タイミング良く、Mさんが来た。
 その後、偶然と言うか、オフ会のお約束と言うか、場所を焼肉食べ放題の店に移した。Mさんはよほどおなかが減っていたのか、食べてばかりいた。
 その様子が、Kさんの怪談話と被り、ちょっと、怖くなって僕はMさんに声をかけた。
「Mさん、さっきから食べてばっかりだけど、どうしたの?」
「……」声をかけられた事に気づかなかったのか、Mさんは黙々と肉を食べ続けていた。「Mさん?」ますます怖くなって、僕はMさんの肩を揺すった。
「あ、ごめん。最近、忙しくて、ろくに食べてないから、おなかがペコペコで……」Mさんが照れ笑いを浮かべながらそう答えたので、僕はほっとした。
 確かに、良く見ると、Mさんは以前より随分と痩せていた。顔色も青い。別な意味で、僕はMさんが心配になってしまった。

 その後、無事オフ会は終わり、僕は家に帰った。パソコンの電源を入れ、今日のオフ会仲間が集まるチャットに行く。そこで、僕は信じられない話を聞く(見る?)事になった。
「昨日、Mさんが栄養失調で倒れて、そのまま……、って連絡が来てたんだけど、オフ会に来たって本当?」